手塚治虫文化賞10周年展

手塚治虫メーリングリストのメンバー、金沢みやおさんのレポートも掲載いたします。MLの中だけに置いとくのはもったいない!(^^)私がとばした内容もきっちり網羅してくださっています♪


夏目房之介氏ミュージアムトーク「手塚マンガはやっぱり面白い」

11月3日(金)。手塚先生の誕生日。宝塚市立手塚治虫記念館で行われた、マンガコラムニスト夏目房之介氏によるトークを聴講してきました。
▼アトムと肩を組む金沢、誕生日を飾る花
アトムと金沢みやおさん

約1時間のトークでは、主に、浦沢直樹氏と、連載中の「PLUTO」を取り上げ、夏目先生お得意の「コマ割り」や「心理描写手法」の分析により、最新の浦沢マンガにも連綿と受け継がれる、手塚先生のテクニック・テイストを浮かび上がらせて見せていただきました。

「コマ割り」や「描法」というマンガの構成要素、物質で言えば分子・原子のような素材レベルでの分析により、作家や作品の関係の粗密を明らかにするこの手法は、あたかも分子生物学において遺伝子の分析により、生物進化の系統・分岐を解き明かすかのようで、スリリングです。

夏目先生は浦沢氏を高く評価して、「PLUTO」での、表情の無いロボットにすら、無表情の顔を繰り返し並べることで、悲しみ・喪失感を感じさせてしまったこのシーンを、浦沢氏の心理描写テクニックが遺憾なく発揮された名シーンとして取り上げていました。
▼レジュメの一部 無表情のロボ顔での心理描写と、トークのチラシ
レジュメ
講義後の質疑応答で、いきなり挙手した金沢は、このシーンについてこんな事を言い出しました。

金沢「電気メーカーの人間として、このシーンは、ロボット同士が、重要・微妙な情報交換を、言語によらない無線や赤外線によるコミュニケーションで行っていると見た。本人認証や暗号化された情報交換が無言のうちに行われたに違いない。それを数コマで読者に(私に)伝達してしまった浦沢氏を凄いと思ったがだれもそういう風に言ってくれない。どう思われるか?」

夏目氏「それは考えなかった。後のシーンで、メモリの組み込みにより微妙な情報が伝達されているから、それは違うのでは?。ロビー奥さんは旧式ロボットだから無線の通信機は内蔵してないと思うし、文系タイプの浦沢氏もそれは考えてなかったのでは」

金沢「ありがとうございました♪」

実は、いまもって自説にこだわってます♪。
システムデザイン上の要請から、移動体であるロボットに無線のインターフェースを組み込まないはずがないのです。ロボットの位置特定や稼動状態のモニターが必要だし、ロボット同士の情報交換や、ロボットと周囲環境(家屋・道路・他の家電製品など)との情報交換に、低速で不確実な自然言語によるインターフェースでは間に合うはずもなく、たとえ旧式・低性能のロボットであろうとも、きっとISOで国際標準化されたロボット用の無線通信プロトコルが採用されているにちがいありません!。が、フィクションの設定につっこんでもあんまり意味がないのでした……。

そ・れ・よ・り・も、夏目先生と直接に問答できたことが嬉しく・興奮してしまいました!。BSマンガ夜話でお馴染みのあの人と直接会話している~、と!(ミーハーです)。

むしろ反省しました。夏目先生がせっかく、心理描写の優れた例として挙げられたシーンに対して、工学的側面からヤボな揚げ足とりをして、話の腰をばきばきと折りかけた金沢でした……orz 。

ま、それは棚に上げ、講義後サインをいただきました。しかもさらさらと描かれたイラスト付き。大ラッキー!。
▼サイン本と、ブラック・ジャック チョコロール
夏目先生サイン

写真の御菓子の箱は、記念館のショップで買ったチョコロール。オマケハガキの「最強医師団」がいいでしょ?。一部あぶない人物が1.5人ほど混じってますが。このメンツならどんな病魔に襲われても大丈夫。もっとも、エキセントリックな人が多いので、ホームドクターをお願いするなら、温厚で常識人な山田野博士しかありえませんが。

帰宅後「PLUTO」を読み直したら、凝りもせずにすげーミーハーな質問を思いついてしまいました!。11月5日のトークでまた質疑の時間があるなら……!。



夏目房之介氏ミュージアムトーク「マンガとは何か」

11月5日(日)、再び手塚治虫記念館に出かけ、夏目房之介氏によるトーク「マンガとは何か」を聴講しました。3日同様、先着50名のみ入場可。私の整理番号は11番でした。
▼記念館2Fのショーウィンドウを背景に、整理券をパチリ
整理番号


記念館で開催中の「手塚治虫文化賞10周年展」入り口を飾るモニュメントでは、「マンガとは何か」という問いに対し、手塚先生の「ぼくはマンガ家」より引用して、

漫画は虚像である。漫画は感傷である。漫画は抵抗である。……(部分略)…自慰である。奇矯である。情念である。破壊である。傲慢である。愛憎である。キッチュである。センス・オブ・ワンダーである。
漫画は……。結論はまだない。
としてありました。
手塚治虫文化賞10周年展


さて「マンガとは何か」という大テーマに対して夏目先生、開口一番「一時間ではとうてい収まりません笑」(場内も笑)。ごもっともです。

夏目先生は、マンガとは何かを考えるにあたり、手がかりとしてグレイゾーンにあるものに注目されたといいます。

すなわち、「こんなのマンガじゃない」「これはマンガと言えるのかな?(でも面白~い!)」とマンガファンに言わしめた前衛的作品群、例えば、石森章太郎「ファンタジーワールド ジュン」等などを通じて、何がマンガで、何がマンガでないと感じさせるのか、を考察されたそうです。

トークでは続いて、マンガのコマについて注目し、手塚先生の前衛的・実験的なコマ、大友・浦沢の映画的・確定的なコマ、少女マンガに顕著な不確定で漂うコマなどを検討しました。

詳細はすっとばして(すいません、私のメモが不十分)これ↓が今日の結論!。
▼「マンガとは何か」の大図解。夏目先生の板書を写してみたもの
マンガとは

夏目先生の考えるマンガとは、「絵」と「言葉」と、それを結びつける「コマ」から成り立つもの、三つの要素の混合物、三つが混全としているもの。

「絵」を純化すると「絵画」に、「言葉」を純化すると「小説」に至り、芸術として高く評価されるが、マゼモノであるマンガの評価は低かった。しかし今では、大衆的媒体として、娯楽として、力を持つようになった。マゼモノのマンガは、大衆社会を表現するメディアであり、そのニーズに応える力があるのだ。
夏目先生は、このように今日のトークをまとめられました。

してみると「ジュン」は「言葉」を持たないゆえに、「絵本」や「絵物語」は「コマ」を持たないゆえに、「マンガ」の境界の外に位置するのだな、と思いつつ、私はお話しを聞いていました。

本日は、先生の後のスケジュールが一杯で、質問時間はありませんでした。用意していたミーハー質問は不発に終わりました……。
「PLUTO」のウランちゃんのセリフに登場する「夏目先生」について、浦沢氏とどんなやりとりがあったのか、夏目先生の周囲の反響はどうだったか、そんな事をおたずねしてみたかったのですが。

夏目先生をお見送りした後、数名のファン・関係者のお茶会に参加しました。のりみさんら、手塚治虫メーリングリストの人や、マンガ家志望の学生さん、チェコからマンガ研究に来た女子学生などがおられました。

隣席の男性がななんと、村上知彦氏でした!。私の古く狭いイメージで言えば、プレイガイドジャーナル、チャンネルゼロ、まんが専門誌ぱふ、の村上氏!。チャンネルゼロから出版された、いしいひさいち氏の「OH!バイト君」を、まだ持っています。村上氏は穏やかに話をされる紳士でした。
うひゃ!、またしても著名な方のそばに立ち会ってしまった。金沢のミーハー魂燃えまくりです!。

というわけで、好天の秋晴れの中、なんとも文化的な金沢の三連休なのでした♪。
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